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データ可視化とリテラシー

文責:石川陽一

"データ可視化とリテラシー"はなぜ重要か

データ駆動経営を行うためには、データの適切な可視化とそれを解釈するリテラシーの両面が必要になります。 しばしば、データの取得や可視化を一部のエンジニアしか行うことができず、高速なサイクルを阻害してしまいます。 そこで、意思決定者自身がデータを直に取り扱えるのかをチェックします。

可視化されたデータから情報を受け取る環境をつくる

「天気予報を見て傘を持つか決める。」「赤信号を見て止まる」など日常生活では、データを可視化して行動を変化させるということが自然とできています。
ビジネスにおいてもデータ可視化を通じて、情報を受け取り、行動を変化させることが重要です。
そのためには、
  • 事業活動のデータが一カ所に集約されている
  • 変化やリスクをわかりやすく可視化する
ということが必要になります。
また、従業員やパートナーがそれらの情報にアクセスしやすい形で配置することも重要なポイントです。事業のダッシュボードとして、日常的に見る場所に可視化されたグラフを配置しましょう。これらが共通言語となって、次により良い行動を取りやすい組織になります。
当然、情報の公開レベルやグループのミッションによって日常的に見るべき情報は異なってきますから、各部門毎に応じたダッシュボードの設計も重要です。全体最適と部署最適のバランスを考えた可視化設計を考えましょう。

もし事業活動の指標がなかったら

事業活動のデータの代表的な例はKPI(Key Performance Indicator 重要業績評価指標)です。KPIはある事業の目標を達成するための、重要な業務評価を数値化したものです。KPIを使って達成状況を定点観測することが重要です。もし、事業領域で主要なKPIを定義しなかったり、必要なデータを集め、KPIを観測可能になるように関係者に見えるようにしなかったりして、事業運営するとどのようになるでしょうか?
各業務領域の責任者の経験と勘のみで業務指示を進めたり、事業の目標に向かって進めているのかどうかの確認が曖昧になったりする可能性があります。
さらに意思決定者がKPIとは何かがわかっていない、ダッシュボードやレポート等で集約されて可視化されたものの意味がわかっていない場合も、正しい行動を起こせないでしょう。
各自のビジネス上の課題となる点はどのようなものがあり、どのようなデータをモニタリングしてくことで解決に近づけるのかを考え、KPI等で基礎的な数値を確認する方法等について学んだ上で、可視化の道具となるBIツールの有用性も理解し活用していくことが必要になります。

なぜダッシュボードは利用されなくなるのか?

ダッシュボードが設置されても、しばしば利用されない事態が起こります。その理由は何でしょうか?
一つの原因は、BI(ビジネスインテリジェンス、事業活動のデータ分析)ツールの導入が、その機能や可能性にのみ焦点を当てて行われることです。特に、導入初期においては、IT部門がビジネス部門よりも進んで行動することが多いです。この状況では、データウェアハウスに格納されたデータをETL(Extract, Transform, Load)を使って整理し、可視化する作業がIT部門に全面的に任されることになります。その結果、ビジネス部門が本来求めていたダッシュボードと異なるものが作成されることがあります。
また、スプレッドシートなど既存のツールを利用していたユーザーにとって、単に「BI化する」だけでは不十分です。データの更新を自動化し、共有を容易にするBIツールの機能を活かしつつも、ユーザーにとって使いやすい形式で提供しなければ、持続的な利用には繋がらないでしょう。
これらの問題を解決するためには、ビジネス部門とIT部門が協力し、実際の利用者のニーズを深く理解した上でダッシュボードを設計する必要があります。

ダッシュボード等の設計者の役割

では形骸化せずに、業務に活かせるBIのダッシュボードやレポートを作成するには、どのようなポイントが考えられるでしょうか? ひとつの見なおすべきことして、BIのダッシュボードやレポートの可視化等に精通したデザイナー(設計者)の役割が考えられます。このデザイナーとなる人は、DBAと呼ばれるデータベース管理者とは異なります。データに関することだからと、可視化の設計者もDBAも同じだろうと、乱暴にごっちゃにして考えるのはよくありません。デザイナーはBIの基礎的な機能に精通しており、データの集約し限られたキャンバス上に表現するといったことができる人です。
ではデザイナーがいれば、あとはお任せで作ってもらう、としてしまうとどうでしょう?この場合も利用価値の高いダッシュボード等ができにくいです。それは利用者の要望とすり合わせがないためです。

設計者と利用者がいっしょに反復的に作っていく

効果の高いダッシュボードを作る対処方法のひとつは設計者と利用者が協力して取り組むことです。
ダッシュボード等を利用するのはビジネス部門ですから、そのユーザーがどのようなデータの可視化が見たいか等、ユーザーの理解を深めていきながら進めるのはよいレポートを作る近道と考えられます。そしてBIツールの可視化のプロトタイプを見せては確認しすり合わせるといった反復的にやりとりし、見て価値のあるものに仕上げていくといったことが有効です。
といっても、利用者が経営者である場合に、ダッシュボード設計者と有効なコミュニケーションを取りにくいなど、反復的なやりとりの開発は容易でないことも考えられます。そのような中では、BIの利点としてある実際のデータを使ったプロトタイプのダッシュボードを使うことで比較的短期間で確認しやすい、といった点を有効的に活用してはいかがでしょうか。
このようにあらゆる局面でデータの可視化をうまく活用して取り組んでいき、データカルチャーを少しずつ作り、データに関するリテラシーを高めていくといった地道な取り組みが必要と考えます。

データ可視化とリテラシーのクライテリア