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顧客接点のデジタル化

文責: 石川 陽一

なぜ顧客接点のデジタル化は重要か

顧客接点がデジタル化していないと、データと顧客を結びつけることが難しくなります。 データ利活用のポイントは、顧客接点に十分コントロールできるシステムが提供できているかが第一歩になります。これは、オンラインに限らず、リアルな接点であっても様々な手段でデジタル化できます。

顧客接点とは、それのデジタル化は?

顧客接点とは、サービス提供を行う企業と顧客の接点となることを指します。タッチポイントという呼び方も同義と考えてよいでしょう。この接点となることは、企業のサービスにアクセスするような直接的なことだけでなく、企業広告などの間接的なことも差します。下表は代表的な顧客接点です。
タイミングオフラインオンライン
利用前・TVCM ・電車、タクシー等広告 ・リーフレット・Webサイト ・SNS ・Web等広告 ・ブログ ・ウェビナー
購買時・店舗への来店 ・接客 ・梱包・ECサイト(モールや自社EC) ・アプリ ・決済
購買後・カスタマーサポート ・郵送DM ・サポート契約サービス・アプリ ・サポートやユーザーコミュニティ ・メルマガ
オフライン、オンラインでも様々な顧客接点があります。
次に顧客接点のデジタル化とは、各顧客接点の活動等をデータの形式としてわかるようにする、取り出せるように保持することです。たとえば、オフラインの場合、店舗への来店であれば、来店した人をカウントすることから始まります。さらに来店があった時間、性別、年代、1人の来店だったのか、複数人の来店だったのか、購買に結びついたか否か、などなど。詳しいデータがあれば、詳細な分析に有用でしょう。
オンラインの例としてWebサイトではどうでしょうか。アクセスデータを収集・分析によって、PCやスマホどちらかのアクセスか?、繰り返し見に来ているのか?、Webサイトに滞在した時間は?、何のカテゴリーに興味があったのか?、などが考えられます。

コロナ禍で体験した顧客接点のデジタル化例

顧客接点に関する活動等をデジタル化としてデータ化することに合わせて、現在行っているサービスも合わせて見直す、というよい取り組みも見られます。筆者が最近経験した例をあげます。
2020年春以降、COVID-19により、あらゆる業態・業種が多かれ少なかれ痛手を受けました。都道府県間の移動も制限されることがあったのも記憶に新しいでしょう。そのような中、私のふるさと 富山のあるラーメン店がラーメンの通販をはじめました。それまでは東京から富山まで新幹線で移動し、さらにその店の営業時間内に店に行き、並んだ後食べられる、という時間がかかることでした。しかし、このネットのサービスを使えば、いつでも注文でき、富山に行かなくても自宅で食べられるようになりました。
サービスを提供する側の店舗としては以下のようなチャンスが生まれ、かつデータが取れるようになったのではないかと考えます。
  • 全国への利用者の拡大
  • 販売サイトへの来店データや注文データ
  • 人気があるメニューの特定
  • メールアドレス等連絡先取得による再プッシュ
  • ネットを通じたクーポンの発行
企業側も利用者側も店舗にはオフラインならではのよさはあるでしょう。しかし、オンラインのチャネルを増やすことにより、企業は上記のようなメリットが生まれ、利用者は利用機会の拡大といったメリットが考えられます。
収集されたデータを分析し、次なるアクションに結びつけた行動を取りやすいこともデジタル化のメリットです。

データの測定や分析

顧客接点でデジタル化したデータにはアクセスログ、購買履歴等があります。このクライテリアでは、顧客の行動履歴データを分析可能な形で保存しており、その割合が顧客全体の7割を超えているかが重要視されています。取り組みでは、まずはこれらのデータを蓄積し、分析対象となるデータの範囲を広げましょう。次に蓄積したデータを企業の関係者の方が見てわかるようにする、定点観測していく、といった取り組みが考えられます。
そして収集したデータをデータレイクに蓄積する、分析しやすいようにデータウェアハウスに整理しておく、BIツールを使って視覚化を行っていくといったプロセスがあります。こういったデータの整理と分析が顧客全体の7割を超える範囲で行われると、ビジネス上の意思決定に更なる信頼性と効率性がもたらされます。
BIツールによるダッシュボードで関係者が見てわかりやすい形で共有する、タイムリーにデータがアップデートされていく状況を作る、こういった取り組みにより共通認識が生まれます。サービスやシステムの改善に何にフォーカスすればよいかが明確になり、経営層等の「勘で次のアクションを取るだけ」といったことを減らせることにつながるかもしれません。このように、クライテリアに基づくデータ分析の進展は、企業全体の戦略的な成長に資する重要な一環となります。

まずは関係者で重要性を認識すること

各企業毎に顧客接点が現時点で何があるか、またその接点をオフライン、オンラインとも増したらどのようなことができるかを整理することが大事です。この点で重要なクライテリアとして、「オンライン・オフラインの両方で、顧客の接点となる行動情報や通知の手段を獲得するためのシステムを開発している組織が社内に存在するか」という観点が挙げられます。
このクライテリアは、顧客との接触の方向性や効率を高め、経営戦略と組織の方針と一致させるための重要な基準となります。そしてそれらの顧客接点についてデジタル化したデータが収集できているのかを関係者で認識合わせます。もしできていないのであれば、そのデジタル化構築に関する相応の手間、構築できた運用維持に関する相応の労力をかけてでも、取り組んではどうでしょうか。
経営層から現場担当者~関係者までデータ収集、整理、視覚化、自動化、共有していこうという強い共通認識を持つことが重要です。こういった共通認識が取りやすくなるために、組織内の関係者間でデータカルチャーが醸成されるように勉強会、レビュー等を実施し、BI等での視覚化後にどのようなことがわかるようになるのかを理解させていくことも大事かと考えます。

技術的・組織的障壁とサービス開発の遅延

顧客接点のデジタル化には次のようなアンチパターンが考えられます。

アンチパターン1: リアルな顧客接点からのデータ収集の不足

デジタル変革において、顧客接点からのデータ収集は非常に重要な要素です。しかし、技術的な課題、社内ルール、オペレーションの問題などからデータ収集が遅れることがあります。このような状況はアンチパターンとなり、企業が競合他社に対して遅れを取る原因となることがあります。データ収集の障壁は、顧客ニーズの正確な把握の妨げとなり、マーケティング戦略や製品開発に悪影響を及ぼす可能性があります。

アンチパターン2: 顧客接点のサービス開発の遅延

顧客接点のデジタル化がうまく進まない別のアンチパターンは、サービス開発の遅延です。顧客接点で提供するサービスや機能の開発が計画通りに進まない場合、データの取得が遅れ、改善の速度が落ちてしまうことがあります。結果として、顧客体験が低下し、ブランドの評価も下がる危険性があります。この問題は、組織の柔軟性の不足、計画の不明確さ、開発プロセスの効率性の欠如などから引き起こされることが一般的です。

”顧客接点のデジタル化”のクライテリア