タスクマネジメント
"タスクマネジメント"はなぜ重要か
タスクマネジメントとは、作業内容やそのステータスを明文化/明確化して誰が担当しているか、どこまで進んでいるかなどを管理することです。
チーム全体で、タスク内容とステータスなどが明文化されていないと手戻りや遅延などトラブルの種になります。たとえば、口頭などでのやり取りが多かったり、曖昧な要求が多いような状態はタスクマネジメントが不全な状態だと言えます。
物事には明文化しきれないことも多々あります。しかし、継続的に明文化する基準をアップデートしながら、認識をそろえていくことで、ムリ・ムラ・ムダのないスピード感のあるチームを作ることができます。
"タスクマネジメント"ができていないとプロジェクトが遅れる
当たり前のことですが、タスクをこなすことによってプロジェクトは前に進みます。しかし、そのタスク自体が管理されていない場合、プロジェクトを進めていくことが難しくなり、最終的にはプロジェクトが遅延することになります。
仮に一人でプロジェクトを進める場合であれば、タスクマネジメントの必要性や難易度は下がります。周りの人と認識合わせをする必要もないため、タスクの可視化が必ずしも必要なくなり、頭の中だけでもタスクマネジメントを行うこともできるかもしれません。
しかし、チームで取り組むプロジェクトの場合はそうはいきません。タスクマネジメントの重要性と難易度は上がります。多くの場合、タスクマネジメントのためのツールを採用し、管理していきます。
ここではチームにおけるタスクマネジメントの不備が、プロジェクト遅延に与える影響について解説します。
品質の劣化による遅延
タスクマネジメントにおいて、一定の品質を明文化することは重要です。
この品質基準がタスクによってバラバラの場合、各人が認識する品質基準で物事を進めていくことになります。そうすると、その認識の違いはQAやレビューなどの品質保証のプロセスでバグなどの形で発見されることになります。
そこから、品質を一定レベルまで上げるための時間を要するため、その分想定外の時間がかかり、プロジェクトの遅延につながります。ソフトウェアのバグは発見のフェーズが遅いほど、修正にコストがかかることが知られています。
場合によっては品質が低いままリリースするという事態にもなりかねません。そういった事態にならないように、タスク自体にテストカバレッジの基準や複雑になりそうな要求について明文化することで、早期にタスクの量の認識をあわせることが必要です。
品質が下がることにより、下記のような問題が起こり、プロジェクト遅延の原因となります。
- 自分に割り振られているタスクの量が多すぎて、品質を下げざるを得ない。
- 品質基準の共通認識がないため、それぞれ適当に品質を作り込んでいる。
不適切な優先順位による遅延
タスクマネジメントにおいて、適切な優先順位を明記することは重要です。
優先順位が未設定の場合、期限までに絶対完了しなくても良い優先順位の低いタスクから完了させてしまう可能性が高くなります。その結果、期限までに絶対に完了していなければならないタスクが未完了な状態となってしまいます。
優先順位が不適切になることで下記のような問題が起こり、プロジェクト遅延の原因となります。
- スケジュール上タスクBを今やらなければならないのに、タスクBが依存しているタスクAが完了していないので着手できない。
- 全タスクの優先順位が一元管理されていないため、どれからやるべきかわからない。とりあえずやりやすいものからやる。
透明性の不足による遅延
タスクマネジメントは、プロジェクトのボトルネックがどこにあるのかを知る上でも重要です。
企画フェーズの曖昧さや要件定義の遅れが遅延の最大の原因であるかもしれないのに、開発工程のタスクマネジメントだけを闇雲に改善しても効率化は望めません。
アイデア構想段階から、顧客に提供されるまでの各段階のタスク管理を行い、誰が、どのタスクを、いつまでにやるのか、品質基準、優先順位などのタスク情報を可視化することで、タスク漏れ、タスクが未定義な状態などプロジェクト全体の効率に影響するボトルネックがなくなります。
透明性が不足することにより、下記のような問題が起こり、プロジェクト遅延の原因となります。
- 締め切り直前にタスク漏れに気づいた。
- タスクCがかなり時間がかかっているようだが、なぜかわからない。後半になって調べてみると、全く必要のない要件まで作り込まれていた。
- チームとして今週やるべきことはまだあるはずだが、自分はやることがなくなった。
- タスクの進捗確認のため、無駄に長い会議が設定されている。
- 締め切りまでやるべきことがあるはずなのに、タスクとして落ちてこない。
- 業務効率化にクリティカルで解決可能な問題があるのに、ずっと解決されない。
高速な仮説検証のための"タスクマネジメント"のポイント
それではタスクマネジメントで何を意識するべきでしょうか。特にここでは不確実性と対峙するような高速な仮説検証を要するプロジェクトでのタスクマネジメントのポイントに焦点を当てます。
タスクがすぐ見られる場所にわかりやすく可視化されている
まずはチームやステークホルダーが理解できるように可視化する必要があります。誰が見てもわかりやすくするのが重要ですが、タスク名だけ一覧にするだけでは情報としては足りません。下記の観点も含め、見やすくすることが重要です。
- タスクの担当者
- タスク期限、または見積もりといつタスクが行われるか
- タスクの依存関係
- 遅延などの最新情報
また、チームやステークホルダーすぐに見られる場所で管理することも重要です。見やすさの観点も踏まえ、どこからでもアクセス可能な共通のタスクマネジメントツールを利用することが多いです。
タスクに期限を設定する・見積もる
期限を設定しなければ、依存関係を含めた計画を立てるのが難しくなります。よって期限を設定するほうが望ましいです。期限だけではなく、時間見積もりを行って、いつタスクを開始し、いつ完了するのかといった情報もあると、より一層タスクの依存関係が把握しやすくなります。
タスクの粒度を細かく揃える
タスクの大きさが大きくなってしまうと、見積もりの精度が落ちてしまったり、リードタイムが発生してしまったり、相互サポートができなかったりなどの問題が起こり、結果的にプロジェクト全体のスピードが下がってしまいます。特に1週間〜2週間の短期計画を立てる際には、1日以内に終わる程度の粒度が好ましいです。
完了の定義がチームやステークホルダーで共通である
何を持ってタスクを完了とするのかの定義は、技術的負債や品質管理の観点でも共通認識を保つ必要があります。チーム内だけにとどまらず、ステークホルダーにまで公開され、認識できるようにすると、手戻りの機会が減ってきます。
ボトルネックを可視化し、排除する
タスク共通で時間がかかっている原因を明らかにし、それを排除することで業務効率化ができ、チーム全体の生産性が向上します。
例えば同じような手動テストで時間がかかっている場合、これを自動化することにより業務効率化ができます。また、アイデア構想段階から具体的なタスクに落ちてくるまでに時間がかかっている場合、そのどこかにボトルネックがあります。こういったボトルネックを可視化し、定期的にチームで改善計画を立て、実行に移す習慣が重要です。