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データ処理パイプライン

文責: 田村敬也

なぜ”データ処理パイプライン”は重要か

データ分析基盤から取得したデータをもとに機械学習や統計処理を利用したアプリケーションを実装するには、試行錯誤の実験フェーズとは異なる知見が必要になります。 例えば、スケールして安定したデータ処理を行うワークフローパイプラインの基盤を作るなどです。 このような一般にMLOps/DataOpsと呼ばれる領域に関わる項目をチェックします。

”データ処理パイプライン”とはそもそも何か

データ処理パイプラインは、データを収集・加工・解析するためのプロセスのことです。一般的に、データ処理パイプラインは以下のような手順で構成されます。
  1. データ収集:データを収集するためのソースからデータを取得します。ソースは、Webサイト、センサーデータ、データベース、APIなどがあります。
  1. データ前処理:データ収集後、必要なデータを選別し、欠損値や異常値などの不正なデータを処理します。また、データを構造化して、データベースやデータウェアハウスに格納することもあります。
  1. データ分析:データ処理パイプラインの中心的な部分で、データを分析し、モデルを構築することで、データから価値ある知見を得ます。
  1. データ可視化:データを可視化し、理解しやすくすることで、ビジネス上の意思決定を容易にします。
  1. データストレージ:データストレージは、データを保存するためのシステムです。データウェアハウス、データベース、またはクラウドストレージなど、適切な方法でデータを保存することが必要です。
  1. データパイプライン管理:データ処理パイプラインの管理は、データパイプラインの各段階で、処理が正常に行われるようにするために、監視、エラー処理、ログ出力などを行います。
これらの手順を通じて、データ処理パイプラインは、ビジネス上の問題を解決するための価値ある情報を提供することができます。データ処理パイプラインは、ビッグデータの処理や機械学習のアルゴリズムの実装など、データサイエンスにおける重要な役割を果たしています。

”データ処理パイプライン”を代表するプラクティスの解説

データ処理パイプラインを有効に機能させるためには、下記観点を整備することが必要です。

モニタリングとアラート

データ処理パイプラインでは、エラーや障害が発生することがあります。そのため、定期的なモニタリングやアラート機能の導入が必要です。モニタリングによって、処理中に発生した問題やエラーを検知し、迅速な対応を行うことができます。また、アラート機能によって、障害が発生したときにすぐに通知を受けることができます。データレイクから、データ分析基盤までのETL処理にも自動テストを導入することでエラー検知を容易にします。

品質管理

データ処理パイプラインでは、品質管理が非常に重要です。データ品質に関する基準を定め、その基準に沿ってデータを管理することで、精度や信頼性の高いデータを得ることができます。実運用されているデータ分析・学習のための前処理や学習処理を実行するためのワークフロー処理基盤(ETLの一貫性・冪等性・可用性を確保するための基盤)を整備することが必要です。具体的には、データの加工や前処理、特徴量エンジニアリング、モデルの学習や評価、モデルのデプロイメントなどの処理を、一連のステップとして定義し、自動化されたワークフローとして実行できるようにします。ワークフロー処理基盤には、Apache AirflowやApache NiFi、AWS Step Functions、GCP Cloud Composerなどのワークフロー管理ツールがあります。これらのツールを使用することで、ワークフローの定義、実行、監視、エラー処理などを効率的に行うことができます。

プロセス自動化

データ処理パイプラインにおいては、データの取得、加工、保存、分析などのプロセスが必要ですが、これらのプロセスを自動化することで、時間や労力を大幅に削減することができます。自動化によって、人手によるミスや漏れが少なくなり、処理速度や一貫性が向上します。

”データ処理パイプライン”はどのようにして測定するか

データ処理パイプラインは、作って終わりではなく、分析・開発や運用のバリューストリーム上の各種サイクルタイムを計測し、継続的に改善することが必要です。サイクルタイムとは、実際に作業に費やされた時間です。それぞれの処理時間・作業時間がどれくらいかかっているのかを把握し、運用上ボトルネックになっている箇所があれば、解決をすることで安定的なデータ活用が実現できます。

”データ処理パイプライン”で陥りがちなアンチパターンとはどういう状況か

"データ処理パイプライン"において、陥りがちなアンチパターンは、設計や運用の過程で起こり得る一連の問題や困難を指します。これらは効率性、信頼性、または生産性に影響を与える可能性があります。以下に、いくつかの典型的なアンチパターンとその解決策を紹介します。

データの欠損を防ぐ

週次集計や月次集計の処理が特定の日時に終わることを想定していると、処理の完了時間に依存するため、障害やエラーが発生すると処理が遅延し、後続の処理が予定通りに実行されず、欠損したデータが生じる可能性があります。これは、処理時間の推定に誤りがある場合や処理の実行順序が不適切である場合に発生することがあります。これを防ぐためには、処理時間の推定には余裕をもたせ、処理の実行順序を適切に設定し、エラーが発生した場合には自動的に処理を再開できるようにするなどの対策が必要です。

環境のポータブル化への対応

データ処理パイプラインを構築する際、複数のサービスや基盤を組み合わせて構築する事が多いため、実験時の開発環境と実サービス環境の不一致が発生することが多くなります。その場合、実サービス環境でうまく動作しないという問題が発生することがあります。そのため、この課題を解決するために、環境をポータブルにするためのコンテナ化やIaC(Infrastructure as Code)の導入が効果的です。

属人化の解消

データ処理パイプラインは、データサイエンスや機械学習、データアプリケーションエンジニアリング、クラウドインフラなど、様々なスキルを必要とします。しかし、これらのスキルが1人または少数の人物に集中している場合、その人物が退職したり、業務負荷が高まった場合、プロジェクトは停滞する可能性があります。また、1つのスキルに特化した人物が複数いる場合でも、それらのスキルが完全に分離されているため、コミュニケーションのミスマッチが発生することがあります。スキルの組織化、分散化を考えながら組織の設計を行うことが必要です。
 

”データ処理パイプライン”のクライテリア: