コミュニケーションツール
文責:日本CTO協会 丸山直樹
“コミュニケーションツール“はなぜ重要か?
ソフトウェアプロダクトの開発はコミュニケーション効率が悪いと途端に遅くなってしまいます。
そのため、気軽に発信・質問ができたり、作業依頼や完了の記録を残していく仕組みの使いやすさは、とても重要な生産性の基盤になります。
業務向けのコミュニケーションツールが利用できない企業では、プライベートとの区別が曖昧になったり、メールや電話などの改まったコミュニケーションが中心となり気軽な情報交換が難しくなります。
また、ドキュメントツールが存在しなければ、ファイルを更新するごとに関係者に配布しなければなりません。あとから必要になれば都度配布の必要が出てしまったり、ファイルを厳密に管理しないとどれが最新のファイルかもわかりづらくなってしまいます。
タスク管理ツールが存在しなければ、誰がどんな作業を担当しているのか、どんな作業があるのかわからず、作業の抜け漏れが非常に多くなってしまいます。
どのような“コミュニケーションツール“があるか?
チャットツール
口頭や電話はリアルタイムにやり取りすることが強みですが、同期コミュニケーションのため、相手も対応できるタイミングでなければコミュニケーションできません。
どちらのツールも後々内容を振り返ることが難しくあります。
メールは非同期コミュニケーションを取れますが、気軽にやり取りがしづらくなっています。
チャットツールならば、内容によってはリアルタイムに近い状況でやり取りができたり、メッセージを残しておき、相手は非同期的に対応するなどの使い方もでき、コミュニケーションの良いとこ取りができると言えます。
また、チャンネル機能を利用してプロジェクトやチームで分けて使うことで、やり取りの内容も整理され、後々情報を追うときの助けにもなります。
ドキュメントツール
都度更新されていくような内容の情報を残すことに、ファイルは適していません。
更新するたびにファイルを送信するのはとても手間のかかる作業です。
複数人で同じファイルを更新をしてしまうと、お互いの更新をうまく取り入れたファイルを作成する必要があるなど慎重に作業しなければいけません。
リアルタイムで誰がどこを編集しているかがわかり、かつ、編集履歴が残るドキュメントツールであれば、これらの課題を気にせずに、情報の共有という本来の目的に注力ができます。
タスク管理ツール
作業の依頼をメールやチャットなどフロー情報で行ってしまうと、今どのぐらいの作業があって、誰が担当しているのか、どんな状況なのかを把握するために、履歴をすべて遡っていく必要が出てしまいます。
作業の依頼は、タスク管理ツールを利用して、ストック情報として管理するのが推奨されています。
今誰が担当で、どんな状況であるのかを即時に把握が可能で、ツールによっては優先度や期限の設定、プロジェクトごとの管理など機能があり、タスク管理に非常に便利です。
情報の透明性
情報の透明性を心がけた運用を行う
コミュニケーションツールは導入するだけでなく、情報の透明性を心がけた運用が大切です。
ダイレクトメッセージやプライベートなチャンネルでやり取りしてしまうと、当事者間でしか情報が残らなくなってしまいます。
「自分が知らないところで情報がやりとりされているのではないか?」と疑心暗鬼になってしまう状況では、従業員の自律性は失われてしまうと言われています。
やり取りをしているのがオープンな場である場合、実は当事者以外でその情報を欲しい人がいれば助けになります。当事者以外に情報を持っている人がいれば、アドバイスしてもらえます。
また、情報の透明性によってさらなる成果を生むケースもあり、経営の意思決定に関する情報もオープンにしておくことで、従業員が自発的により良い意思決定を行えるようになります。
情報の透明性は心理的安全性を高める要素の1つになっています。
どうやって測定するのか
チャットツールによっては、パブリックなメッセージの割合とプライベートなメッセージの割合の測定が可能になっています。
プライベートなメッセージの割合が高い場合、情報の透明性が低くなっている可能性があります。
原則パブリックなメッセージで基本的にやり取りし、個人情報などクローズド情報のみプライベートなやり取りをするといったルール作りや、組織内で気軽に発信ができる文化を作っていくなど対策を実施していきましょう。
気軽に発信できる文化を作る
気軽に発信できる文化を作る手段のためには、雑談は重要です。そのため、パプリックチャンネルでの雑談を禁止するなどはアンチパターンだと考えられています。
雑談は生産性を下げるのではないかと危惧してしまう気持ちはわかります。しかし、仕事に関係のないこととして発信禁止にしてしまうと、パブリックな場に発信する前に、仕事に関係があるか判断しにくいものは発信をためらってしまいます。
その結果、不特定多数に見られないプライベートなメッセージへの発信につながってしまいます。
雑談を禁止しないことでパブリックな場への発信のハードルが下がります。
また、仕事に関係ない話題が、思いもよらぬ形で仕事のアイデアになることもあります。
雑談を通してお互いを知ることで連帯感が高まり、仕事の成果につながることもあります。