透明性ある目標管理
文責:日本CTO協会 貝瀬岳志
"透明性ある目標管理"はなぜ重要か
強いチームを支えるのは明確な目標管理です。明確な目標はチームのパフォーマンスを向上させるだけでなく、エンゲージメントの向上にも効果があると言われています(Google社のre:work等に根拠となる論文が紹介されています)。
"透明性”と”目標管理"について
”透明性”は、アジャイル開発で有名なスクラムでも、そのフレームワークを支える3本柱の一つとして定義されています。スクラムにおける透明性では"正しい情報が一箇所に集約されており、次の行動を誘発すること"が重要とされています。
一方、"目標管理"については経営学者のドラッカーによって提唱されたMBO(Management by Objectives and Self Control)が広く知られていますが、日本では"目標と自己統制によるマネジメント"と訳されています。
"透明性ある目標管理"で重要なポイント
"透明性ある目標管理"を"組織の正しい目標を一箇所に集約・公開することで、チームや個人の自己統制を誘発するマネジメント手法 "と捉え、重要なポイントに絞って解説します。
目標には優先順位をつける。
優先順位を明らかにしておけば、チームや個人が日々の業務で発見した課題やアイデアに対しても客観性を持って論理的に、取り組むべきこと(取り組むべきでないこと)を判断できるようになります。
目標には計測可能な指標をつけ定期的に更新する。
指標を明らかにすることで、目標や優先順位を見直す機会を促します。計測可能な指標とは、例えば、成果指標に対する達成度、重要なマイルストーンに対する進捗度などです。
目標と指標は従業員の人事評価とは切り離して考える。
目標と指標を従業員の人事評価に使ってしまうと、”透明性ある目標管理”の阻害要因になります。阻害要因とは、例えば、チャレンジングな目標を設定しない(簡単に達成できる目標しか設定しない)、目標や指標の公開そのものをしなくなる、などです。
“透明性ある目標管理”を支えるプラクティス
"組織の正しい目標を一箇所に集約・公開することで、チームや個人の自己統制を誘発するマネジメント手法 "として、重要なポイントを抑えているプラクティスの一部を紹介します。
OKR
OKR(Objectives and Key Resultsの頭文字)は”目標と成果指標”と訳されます。Google社が導入していることで有名です。
- OKRは組織やチーム、個人など、各レベルに導入が可能です。
- OKRでは重要な目標に絞って設定することで優先順位を明確にします。
- 目標の達成率と人事評価を切り離すことで野心的な目標(60〜70%程度の達成率で成功、100%の達成率だったらムーンショット、という具合)を設定でき、結果として高い目標を達成できる仕組みです。
V2MOM
V2MOMは(Vision、Values、Methods、Obstacles、Measuresの頭文字)で、ブイツーマムと読みます。Salesforce社が導入していることで有名です。
- V2MOMは組織やチーム、個人など、各レベルに導入が可能です。
- V2MOMはOKRと似た構造ですが、より強くビジョンに焦点を当てていること、目標を達成する上で障害となるものも含めて公開すること、などが特徴です。
プロダクトゴール
プロダクトゴールは、スクラムガイド2020年11月版から導入された概念で、プロダクトの将来の状態、つまりスクラムチームの長期的な目標を言語化したものです。
- プロダクトゴールはプロダクトオーナー(プロダクトの責任者)が中心となって作成し、スクラムを採用している組織やスクラムチームに公開するものです。
- プロダクトゴールはプロダクトバックログ(開発要件の一覧)の更新時、スプリントゴール(スクラムチームの短期目標)を設定時、などに参照・活用されます。
透明性ある目標管理のクライテリア
参考資料
- HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント) 人を育て、成果を最大にするマネジメント(アンドリュー・S・グローブ (著), ベン・ホロウィッツ (その他), 小林 薫 (翻訳))
- Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR (メジャー・ホワット・マターズ)ジョン・ドーア (著), ラリー・ペイジ (その他), 土方 奈美 (翻訳)