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複数チーム/経年比較での使い方

はじめに

DX Criteriaは、デジタル技術を企業が効果的に活用するために必要な要素を体系化した評価ツールです。ソフトウェアエンジニアリング組織の健全な成長、経営目標の可視化、パートナーとのコミュニケーションの促進など、多岐にわたる目的で利用されています。本稿では、このDX Criteriaを複数チームおよび経年比較で活用するための方法について詳述します。

複数チームでの活用

1. チームごとの評価基準の設定

各チームが異なるプロジェクトや業務を担当している場合、それぞれの役割や目標に基づいた評価基準を設定することが重要です。例えば、開発チームと運用チームでは、求められるスキルや成果指標が異なります。チームごとの評価基準を設定することで、評価結果がより正確にチームの実情を反映します。
  • チーム単位での測定: チーム単位での評価を行う場合、まずは「チーム」と「システム」の項目に焦点を当てて測定することが有効です。これにより、各チームの内部の協力体制や技術的な基盤がどの程度整っているかを把握することができます。
  • 事業単位での測定: 事業単位で評価を行う場合には、「チーム」と「システム」に加えて、「デザイン思考」および場合によっては「データ駆動」の項目も含めて評価することが望ましいです。これにより、事業全体の包括的なデジタル技術の活用状況をより広範に評価できます。
これにより、評価結果が各チームや事業の特性を正確に反映し、組織全体の強みや改善点を明確に把握することが可能となります。

2. 評価の一貫性の確保

複数のチームが同じ基準で評価されるためには、評価プロセスの一貫性が不可欠です。評価者全員が同じガイドラインに従い、統一された評価方法を用いることが求められます。このために、評価前に評価者全員に対するトレーニングを実施し、評価基準や評価方法の理解を深めることが重要です。また、以下の方法も評価の一貫性を確保するために有効です:
  • 定期的な評価者ミーティング: 評価者同士で定期的にミーティングを行い、評価の進捗や基準についてのディスカッションを行います。これにより、評価の一貫性を維持し、疑問点や課題を共有して解決することができます。
  • 同じ評価者による評価: 一人の評価者が複数チームを継続的に評価が可能なのであれば、その評価者が複数のチームを評価することで、評価基準のばらつきを減らすことができます。評価者が変わる場合でも、評価基準や手順を明確に定義して共有することで、一貫性を保つことができます。
これらの方法を取り入れることで、評価の一貫性を確保し、各チームの評価結果がより信頼性の高いものとなります。

3. 評価結果の比較分析

各チームの評価結果を比較分析することで、組織全体の強みや弱みを把握できます。例えば、あるチームが特定の項目で高評価を得ている場合、その成功要因を他のチームにも適用することで、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。また、全体的な傾向を把握することで、組織全体の戦略や改善計画を立案する際の参考になります。
この例では3チームがそれぞれ「チーム」のテーマについて評価をした結果を並べて表示しています。この場合、Cチームが「経験主義的な見積もりと計画」に関して知見を持っていそうだということがわかるので、Aチームの人がCチームの活動を参考にすることができます。

4. フィードバックの提供と改善策の実行

評価結果に基づくフィードバックを各チームに提供し、具体的な改善策を提案します。フィードバックは建設的で具体的な内容にすることが重要です。また、改善策の実行をサポートするために、リソースの提供やトレーニングの実施など、組織全体での協力体制を整えることが必要です。

5. 組織全体の評価結果の算出

組織全体の評価結果を出す際には、全チームに対して同じ項目を評価し、その組織全体の平均値を取る方法があります。
こちらの例では3チームの「チーム」テーマの平均値を算出しています。
(23.0 + 39.0 + 56.5)/ 3=39.5 となりました。
このアプローチにより、組織全体のパフォーマンスを総合的に評価し、特定のチームや部門に依存せずに、全体の健全性や成長度合いを把握することができます。評価結果の平均値を算出することで、組織全体の強みや弱みをより客観的に評価することが可能です。

経年比較での活用

1. 定期的な評価の実施

DX Criteriaの評価は一度きりのものではなく、定期的に実施することが重要です。例えば、半年ごとや年に一度など、組織の状況に応じて評価の頻度を設定します。定期的な評価を通じて、組織の成長や変化を継続的にモニタリングできます。

2. 評価結果のトレンド分析

経年比較を行うことで、評価結果のトレンドを分析できます。特定の期間にわたる評価結果を比較することで、どの領域で改善が見られるか、またどの領域で停滞や後退が見られるかを特定できます。
こちらの例では、「経験主義的な見積もりと計画」、「バリューストリーム最適化」が大きく改善していることがわかります。
このトレンド分析により、組織の長期的な成長戦略や改善計画を具体化することが可能です。定期的な評価結果を集約し、変動の原因を特定することで、より効果的な改善策を講じることができます。

3. 目標値の設定

過去の評価結果や他社のデータを基に、将来的な目標やベンチマークを設定します。例えば、自社でDX Criteriaのスコアを公開している企業の事例や、日本CTO協会のレポートに掲載されている様々な業種・会社規模のデータを参考にすることができます。これにより、現実的かつ挑戦的な目標値を設定し、次回の評価時にその達成度を確認します。
下記のブログ記事では、自社の組織と他社の組織のDX Criteriaのスコアを比較している事例です。

目標値設定の注意事項

DX Criteriaのスコアを満点にすることは、必ずしも事業にとって最適な投資対効果を生むとは限りません。各項目には、あなたの組織に必ずしもマッチしないものが存在する可能性があります。スコアが低い項目については、その分野に詳しいチームや専門家と話し合い、改善が本当に必要かどうかを議論することが重要です。このプロセスを通じて、組織にとって最も価値のある領域に焦点を当てた目標設定が可能となり、資源の最適な配分が実現できます。

結論

DX Criteriaを複数チームおよび経年比較で活用することで、組織のデジタル技術活用状況を多角的に評価し、継続的な成長を促進できます。チームごとの評価基準の設定、一貫性の確保、比較分析、フィードバックの提供、組織全体の評価結果の算出、定期的な評価、トレンド分析、目標値の設定とその注意事項など、具体的な方法を実践することで、組織全体のパフォーマンス向上を図ることができます。DX Criteriaを有効に活用し、組織のDXを成功に導きましょう。