事業活動データの収集

文責:石川陽一

"事業活動データの収集"はなぜ重要か

事業領域について価値創造を行うためには、顧客や事業の活動データが必要になります。
データを元に可視化や分析を行った上で、デジタル化や高度化に取り組めば、データの裏付けがある施策を打てます。

事業活動データとは?

事業を行う上での活動に関わるさまざまな活動のデータを指します。たとえば、顧客対応を行う部署の人が、対応内容を紙に書き取ったメモの内容もデータです。
 
紙のメモには、紛失しやすい、関係者に共有しにくい等のデメリットがあります。また、紙のメモからデータ入力するといった場合はリードタイムが発生し、データの鮮度も落ちてしまいます。もしメモが最初からデジタルのデータになっていて、整理しやすい形だとさまざまな切り口(軸)で分析できます。
 
上記のごく簡単な例では、一般的な応対における顧客対応でした。コンビニのレジにおける顧客対応では「どのようなお客様か(たとえば、子どもか大人か、時間帯など)」をPOSレジで入力して収集できます。でも、レジ担当の人が、入力をあまりに適当に行ったら、よい事業活動のデータ収集にはならないですよね。データの品質は、担当の人の対応に左右されることです。
コンビニにおけるデータ収集のばらつき問題に対し、タクシーのケースでは改善策が打たれてきています。車内に設置された端末から映像を取得し、お客様の特性(想定する年代、時間帯、場所)等をAIも活用しながら収集するといった実例があります。プライバシーにかかわるデータ収集の際には、何をどういった目的で収集しているのかを説明し、利用者の同意を取るといった配慮も重要です。
 
事業活動の中では、どのようなものがデータとなるのか、収集手段はどのような方法で行うのかなど、考えることが大事です。

施策のビフォー・アフターを知る

事業活動データが適切に収集されていると、改善施策の前後での変化がわかります。
 
事業活動データの例は以下です。
  • 取引トランザクションの処理数
  • 売上、利益、アクセス数など事業上の直接的なKPIとなるもの
  • WEBアクセスのログや分析データ
  • 事業に関連するSNSや業界動向に関連する外部データ
 
まず取り組みの対象となる事業データにはどのようなものがあるか、測定可能かを確認すること。新規にシステムを作るなど高度化する前の"ビフォーの状態"でも可能な限り継続して収集します。
さらに、システムを入れた後の"アフターの状態"ではどのように変わるかを確認することで、いわゆるビフォー・アフターの効果測定が可能になります。

データの確認なくシステム作りに対処した場合のデメリット

もし、事業活動のデータを確認せずにシステムやサービスを作って対処した場合、以下のようなデメリットが考えられます。
  • 導入効果があったのかなかったのか曖昧になる
  • データの裏付けのないシステム作りになり、勘に頼った対処となる
確実な効果測定を行うためにも、データの収集は重要です。

従前よりもデータが収集しやすい環境下にある

従前「データの収集」を行うとなると、データの収集を行うためのシステム作りが必要だ、あるいはデータがあちこちに散らばっており収集が難しい、といった背景がありました。現在はクラウド等の発達により、収集場所や分析の土台として活用することはひと昔前ほど難しくありません。文章や音声、動画といった非構造化データもデータレイクに置き、なんらかの解析ツールを使うことで、見やすく可視化したり分析したりできます。
データ収集について自動化や可視化し、共有するBI(Business Intelligence)ツールや、ログから活動を可視化するツールは過去よりも安価に、手軽に利活用できるようになってきています。
可視化等において、当初から完璧な形を目指し顧客や事業の活動を精緻に表現しないといけない、と考えると、精度を求めるあまり時間と労力を多くかけ過ぎてしまうことも考えられます。できる範囲と量から取り組みをはじめ、企業活動のデジタル化の内容に応じて、フォーカスして収集すべきデータや精緻化していくべきデータの精度を上げ、レベルアップを徐々に図ることが重要です。

データ収集に関する人やチームが必要

データ収集がしやすくなる環境は良くなってきた上で次に必要なのは何でしょうか?
 
たとえば以下のようなことが考えられます。
  • ビジネスのことを理解した上でそのデータが集まるように働きかけること
  • 継続的に蓄積されているかの確認すること
  • 収集に関してどのような手間やコストがかかり、それらのスピード感の理解
  • 関係するメンバーと共有できること
  • データ自体の整理、その可視化や自動化、共有する仕組みをつくること
 
これらのことの担当者や担当チームが必要になります。CTOはもちろんプロジェクト等の関係者全員が、こういった取り組みには人手と手間がかかることを理解すること。これが、事業活動データ収集についての第一歩目です。

事業活動データの収集のクライテリア